2007年2月16日

既存木造建物への増築・改修

 大地震が起こる度に、その数年後に改正されている建築基準法。

 今までは、改正されても”既存不遡及”を原則としていたのだが、一昨年から”増築する場合には、原則的に既存部分も現行法規に適合するように改修しなくてはならない”ということになったのだ。

 まぁ、ただし、”原則的には”ということで、緩和される方法もあるのだが、・・・。

 緩和内容としては、”既存部分は、耐震診断基準(現行法規よりは緩い)になっていればいいよ。”っていうこと。

 その条件なのだが、”増築部分と既存部分とは構造上、相互に力を伝えないように分ける”必要がある。

 当然、2つの建物を力が伝わらないようにするには、柱や梁だけでなく外壁や屋根もくっつけてはダメ。

 「ハイ、其処と其処!すき間を空けなさい!」ということになる。

 すき間が出来れば、そこから雨や風が入る。

 雨漏りするものをつくっては、調子悪いので、力を伝えずに、すき間を空けないように柔らかい材料か可動するモノで連結する必要がある。

 鉄骨造や鉄筋コンクリート造では、”エキスパンションジョイントカバー金物”という、既製のアルミやステンレスのカバー金物があるが、木造用ではちょうど良い製品がないのだ。

 板金でつくるって手もあるが、だいたい、継ぎ接ぎがはっきり判っちゃう外観はみすぼらしいし、それにやっぱり雨漏りが心配だ。

 ということで、既存も増築部分も含めて、新たに全体を一体的に地震などに対して耐えられるように、補強を行うのがよいと思うのだが、・・・。

 ココで、重大な問題が持ち上がる。

 予算である。

 建て主は、「チラシで見た住宅は坪当たり○○万円だったな。増築も同じようなところだろう。
○○坪の増築だから、○○○万円もあれば大丈夫だろう。」と計画する。

 ところが、前述したように、法律は許してくれないのだ。いじるつもりのなかった既存の部分もいじらなくてはならないのだ。

 「今までウン十年住んできたが、地震があっても何とも無かったのに、なんで直さなくっちゃいけないんだよ。そんな余分な金出せないよ。」となる。

 ”増築や改修がしやすい”というフレキシブルなところが、軸組木造の最大の利点だったのだが、結構大変なことになっちゃったのだ。

 これは由々しき問題だ。

 だいたい、「今までの法律の基準では安全性に問題があるので、これからはコッチの新しい基準でやらないとダメだかんね。」と上から云われているみたいで、設計者としても建て主に説明しづらいのである。

 

 そもそも、既存の建物だって昔の建築基準法ギリギリの強度しかないのか、現行法規以上の強度があるのか、壁や屋根を剥がして調査しないと本当は判らないのだ。

 ともかく、知恵を使って考えないと色々と大変なのだ。

 大地震が本当にやってきて、自分が関わった建物が崩壊して不幸なことが起こらないよう、軽々な判断は出来ないのである。


 

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