2006年1月19日

設計・監理は何のため?

 今日の国会参考人質疑で、スペースワンなる設計事務所の所長が陳述した内容に違和感と共に不快感を覚えたので、エントリーする。
 鉄筋コンクリートラーメン構造の梁スリーブの位置と補強等について、「監理者は関知しない」と言い、「設計図でもいちいち指示していない」と言っていた。挙げ句の果てには「大手ゼネコンだったら問題なく施工する。(つまり、監理者は検討も指示も確認もしない)」「型枠を組んでしまえば見えないので確認しようがない」と言っていた。
 僕は所謂、意匠設計者で、構造設計者ではないが、あまりにツッコミどころ満載なので、思わずテレビに向かって突っ込んでしまった。
 鉄筋コンクリート造の標準図にはスリーブ開口についての位置と補強筋の基準が記載されているのが普通だ。また、特記仕様書にはスリーブの径と箇所数・施工区分を明記する。少なくとも、これは普通のことであり、こんなことも知らないで設計事務所の所長とは呆れるし、その責任の元で設計監理された建物に多数の人達が居住しているのかと思うとゾッとする。
 今回の偽装問題は、倫理観の問題だと思い法律等による規制が強化されるのには反対していたが、この発言を聞いて、知識や能力の問題もあることに気づき、資格者たる建築士の能力についての法的な規制も必要かも知れない。
 それよりも、憤りを感じたのは、

「大手ゼネコンだったら云々」発言である。なんじゃ、そりゃ。全くの職能放棄だ。
 そんなことが口から出てくるような意識だから、ゼネコンの下請け、言いなり、寄生虫みたいな立場に立ってしまうんだよ!
 僕の経験から言うと、大手だろうと中小だろうと鉄筋・型枠の施工管理は、そんなにまかせて安心な感じは全くない。特にスリーブは、設備工事に必要なものが主なので、躯体施工者と設備施工者間で位置・高さについての調整が上手くいってないことが多い。それに加えて、廊下の天井の中心に秩序立てて空調機(これの冷媒やドレン配管を通すためにスリーブは必要)を配置したい等と意匠的な要求も絡むと、施工者がいかに優れていようとも、監理者が検討・指示しなくてはまとまらない。この所長は全く現場を分かっていないし、自分の仕事や人格を自分でおとしめて何にも感じない、なんともバカヤロである。

 「型枠を組んでしまえば見えなくなるので云々」全く現場を見たことが無いのが良く判る発言だ。梁スリーブであれば、梁成(梁の高さ)が1500ミリ程度あってもスリーブはおろか梁底まで見えるし、スケールで測れる。やっぱり、この人は現場を見たことがない人なんだ。
 重ねていうが、こんな輩が何億という工事費の建物の設計監理を行い、その建物で何も知らない人が居住するという恐ろしい構図だ。やっぱり法律で規制するしかないかも知れない。

 スペースワンみたいな設計事務所が普通なのだろうか?
 設計者・監理者は建築主(ヒューザーみたいなデベロッパーは正確には売り主であって、建築主ではないと思う)の代理者として、建物を設計し、施工を指導・監督する。こんなシンプルなことが、普通ではないのだろうか?

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コメント

分譲とか建売っていうシステムがおかしいんですよ。
でも日本の住宅政策はなぜかこのシステムを推進している。
法律で規制したって規制する方に能力無いんだから無駄ですけど、
どうしても法律でこのシステムの信頼性を支えたい人々が存在するのです。
みんなが「買わない!」って言えば万事解決なのになあ。

超遅レスすまソ!

確かに分譲とか建売ってシステムが普通になっているよなぁ。設計事務所に頼んで、設計と施工を分離しようとすると、融資する銀行が自分の不勉強を棚に上げて、めんどくさがってハウスメーカーを紹介するって話を聞いたことがある。
そもそも、設計と施工を一括で請け負わせることは建て主にリスクがあることもあまり知られてないみたい。というか知られたくないみたい。

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