2005年9月27日

おいおい、それはなんのまねだ。

 友人の知り合いのお宅の雨漏り補修の立ち会いでのこと。
 そのお宅は、以前書いたツーバイシックスの輸入住宅。2ヶ月以上経ってやっと軒樋を取り付けることになったとのこと。
 相談を受けた以上、不安だったので、立ち会うことにした。

 そこで、やってきたオジサンが、トラックに積んで来たのは、たぶん厚さ0.4㎜ぐらいのガルバリウム鋼板を加工した軒樋。材質と寸法を確認。その間、材料を持ってきた人は何も説明せず脚立足場を組み立てていた。そのお宅の御主人に向かって、「おはようございます」もなければ、「今日はこれこれこういう工事をするので、○○時ぐらいまで掛かります。」も言わないし、そもそもどういう人に何を指示されてどういう工事をしに来たのかも言わない。
 無口な照れ屋さんなのかとも思ったが、話しかけても応えてくれない。どう見ても日本人に見えるが、もしかすると日本語が判らないのか?それとも聾唖者か?それでは失礼なことをしてしまっているのか?など、余計な心配をしていると、やおら軒樋を直に外壁に押さえつけて軒樋の横腹からビスを打ち始めた。当然、軒樋の前板が電動ドライバーの邪魔をしてなかなかうまくいかない。
 っていうか、軒樋の内側から直接ビスで外壁に取り付けるつもりなのか?
 おいおい、それはなんのまねだ。

僕「支持金物は使わないの?」
オジサン「・・・・(無言)」
僕「前板が風で煽られるのを抑えるための力骨は入れますよね。どうやって入れるんですか?」
オジサン「・・・・(無言)」
 この間、オジサンは左手で軒樋を押さえて、右手で電動ドライバーを使おうとするが、右手一本でビスとドライバーを同時に扱うのは無理で、バタバタやっていた。

僕「力骨いれなんですか?」
オジサン「いれね。」
 やっと口をきいてくれた。よかった、日本語が判るみたいだ。

僕「その軒樋、たぶんコンマ4・5㎜の厚さしかないと思うけど、台風でなくても、風が吹いたらバタついちゃいますよね。どう思います?」
オジサン「・・・・(無言)」
ご主人「職人として、この方法で大丈夫って思ってやってます?」
オジサン「・・・・。やんなきゃいいんでしょ。」
ご主人「そうは言ってないですよ。付けたけど結局ダメでしたでは、またやり直さなくちゃいけないから、どうやって付けるのか、その方法で大丈夫か?って聞いてるんですよ。」

 しばらくして、オジサンは足場からおりてくると、携帯電話に向かって怒鳴り始めた。
「このやり方じゃダメだって言うんで、今日は帰りますからね。損しちまったよ。・・・。そう、なんかうっさいこと言う人がいて、ダメなんだ。もうやりませんから、他の人に頼んでよ。・・・。とにかく、もうやんないからね。」
 どうやら、電話の相手は、この家の設計施工をした元地元ハウスメーカーの社長らしい。なんだ、ちゃんとしゃべれるんじゃないの。なんかうっさいこと言う人って僕?
 途中まで苦労して取り付けた軒樋をはずして、足で踏みつけはじめた。ありゃりゃ、もったいない。資源は大切に!
 そのあと、そのオジサンは、奥さんが煎れてくれたお茶を飲んで、帰っていった。また、軒樋付かなくなっちゃいました。

 お茶を出した時に奥さんが聞いたところによると、そのオジサンは板金屋ではないらしい。ツーバイ専門の工事屋さんらしい。
 「その方法で大丈夫なの?」って聞いたところで、答えられなかったのかも知れない。とにかく、社長から「こう付けてこい」って言われてそれだけだったのかも知れない。

 工業化による技術のマクロ化・画一化に対して、僕は批判的であり、現場職人の応援をしたいと思っているが、このオジサンのような人までは職人とは呼びたくない。

 どんな職業の人でも、自分の仕事の技術・知識・経験に誇りを持つべきだ。特に職人には、そうでなくては、自分の首を絞めてしまうことになると感じてほしい。逆に一方で、誰にでもできるもんじゃない技術を持っている職人は、もっと尊敬すべきなのだろうとも思った。

 今日のオジサンのような工事屋さんは、競争原理が社会を浄化していくと云う幻想で、実際は、価格競争だけのいびつな競争社会を是としてしまっていることの一つの表現形なのかも知れない。
 そう考えると、「おいおい、それはなんのまねだ。」ってことをしているのは、僕たち全員の方かも知れない。

 

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