2005年9月20日

プロの職人の道具


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 普段からお世話になっている、左官屋さんのリフォーム部のイベントに「増改築相談窓口の設計屋」として参加した。
 大手ハウスメーカーや建材メーカー主催のイベントとは違って、全て手作り、持ち寄りなので、ほのぼのとした雰囲気であった。そのせいか、「増改築相談窓口」は、とってもヒマだった(苦笑。すみません、あまりお役に立てなくて)。

 おかげで、顔見知りの左官職人に道具や技について、じっくり話を聞き、技能を見せてもらうことができた。上の写真は、その職人の使うコテの一部。下の方は、野丁場で使う普通のコテ。上の革ケースに入っているのが、本当の技能が必要とされる仕上をする時に使う鏝。


RIMG0047_resize1 これらの鏝は、鋼鉄製で全て鍛造で造られている。鏝の表面の錆や傷が仕上に出てしまうので、使ったあとは水分を拭き取りヤスリで研いで革ケースにしまうそうだ。
 ちなみにお値段は、1本で約3万円〜5万円ほどだそうだ。他の職方の電動工具と比べたら、そんなに高くはないが、ホームセンターでなら1本千円ぐらいで買える鏝に、3万円以上かけるのはプロとしての誇りと、腕と道具がそろってやっと自分の納得出来るものをつくれることに近づくことができることが分かっているからだろう。
 これらの鏝は、もうつくる人が年寄りしかいないので、鏝が壊れるよりも先につくる人がいなくなっちまう。つまり、消耗したら買い換えられない、と大事に使っているそうだ。
 また、この職人は、腕を磨かなければ、これらの鏝の出番が必要な仕上の仕事に呼ばれないということで、見本づくりを積極的にやり、その他にも自分の部屋で練習をするそうだ。


RIMG0045_resize1 この鏝は、たしか漆喰塗りの磨き仕上用だと思う。鍛造なので、鏝に厚みがある。持ってみると重みを感じるのだが、柄のバランスがいいのでこのように軽くつまんでも持てる。

RIMG0044_resize1 鏝の上面には模様のように刻みが入ってる。おしゃれ。
 柄の部分には職人の名を示す文字が焼き印してある。もちろん特注の焼き印だが、こちらも、この大きさ(1センチ角)で焼き印を造る職人が高齢で引退してしまったので、もう造れないとのこと。

 で、イベントでは、左官教室というコーナーがあって、珪藻土壁材を素人に塗ってもらうのを左官職人が指導することになっていた。この珪藻土壁材というのは、また、話せば長くなるのだが、それはまた今度にしておいて、とにかく来た人に珪藻土壁材をイーゼルに立てかけた板に塗ってもらうのだが、いつのまにか、本漆喰の磨き仕上を職人同士が競いはじめていた。それで、最初は安い鏝でやっていたのだが、終いには自分ン家まで上記の鏝を取りに行って持ってきたというわけ。
 仕上用の雲母の粉まで持ってきて、最後は素手で磨いてました。できあがった本漆喰磨き仕上の見本は、確かにトラバーチンのような光沢と深みのある色が出てました。おいおい、お客を大事にしないと・・・。

 彼らは営業とかとは無縁で、頼まれれば、満足してもらえるように、それ以上に自分が満足するようにやるということなんでしょう。道具への思い入れは道具を見ればわかりますし、仕事への誇りは道具をみればわかります。

 この左官職人は、実はまだ30歳そこそこです。ピンと背筋の伸びた気持ちのいい奴です。「今度、一緒にやりましょうよ」と言われました。是非、この職人の誇りと、やる気と、道具を生かせるような、そんな設計をしたいです。

 僕も設計職人として誇りを持てるようにしなくては。道具への思い入れも大事だよな。スケッチブック・セクションペーパー・鉛筆・ペン・スケール・カメラ・コンピュータ・コンピュータソフト・・・。それなりに思い入れがあるものを使っているつもりなので、あとは知識を深めることと技能を磨くことをしなくては・・・・。

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