2005年7月 1日

建築設計者は、自立した自由な立場に居なくては

 建築設計事務所は、建主の代理人として、基本的には建主の利益を守る立場にあります。
 建築主にとって、設計事務所に依頼すると言うことは、専門家を自分の味方として雇うと言うことです。

 建築設計事務所は、建物を創り出しますが、建物は造りません。建物を造る施工者にその建物の仕様と設計図を伝え、工事を監督・指導・助言することで、建築を創り出します。

 別に設計事務所に頼まなくても、ハウスメーカーや工務店・ゼネコンでも設計図を書いて建築基準法関連の許可・確認をしてくれます。そしてその費用は無料であったり、かなり安かったりします。しかし、当たり前のことですが、その分のお金は、建物の工事費に巧妙に含まれています。(一般にハウスメーカー・工務店・ゼネコンの設計部署の給与は、設計事務所の所員より高額です。一方、建築費の各工種毎の実際の単価はわかりづらく、設計の分の経費が含まれていても一般の方にはわかりません。)
 つまり、施工をする会社は、極論すれば「安い原価で作った家を高く売りつける」ほど粗利益が多くなるわけです。安い原価にするためには、材料費と人件費をおさえる(ごまかす?) ことになります。供給過多になっている工業製品を多く使い、またそういった材料は、手間をかけずに工事ができるため、人件費をおさえることにもなります。こうして、竣工した当初は綺麗でも、時間と共にみすぼらしくなっていくような住宅を売る方が儲かるという図式になります。(あくまでも、最悪のシナリオですよ。そうじゃない、信念を持った施工者ももちろん一杯います。)

 設計事務所の場合は、最初にある一定の金額で報酬を決めてしまえば「予算の範囲内でなるべく高いレベルの建築をできるだけ安く建てる」ことを目指します。そうすることができることで、建築主も喜び、設計事務所も信頼を得ることができ、次の仕事への営業にもなります。もちろん、施工者が材料と手間を抜くことが自分の信頼失墜につながるので、厳しくチェックします。
 ただし、建築主から直接ではなく、工務店やゼネコンから間接的に依頼された場合には、当然、設計内容・監理内容が工務店やゼネコンの顔色を見てしまい、純粋に建築主の代理人とはなり得ません。
 建築主より直接設計事務所に依頼されることで、スケジュール・コストをコントロールし、施工者の選定に当たっても専門家の立場から建築主に助言し、工事が適正に行われているか監督指導出来るのです。

 一方、創り上げる建築は、建築主の所有するものでありますが、広大な私有地に建つ建築コレクションでもない限り、公共の道路等に面しているため、また、周辺の環境を構成する重要な要素であるため、社会ストックとしての一面も持ちます。つまり、建築主が「私のものなんだから、私の好きなように創ってくれ」といわれても、その要求するものが社会的に受け入れ難いものは、建築設計の専門家として、建築主を説得して変えてもらうことが必要です。

 そのためには、設計事務所は自立した自由な立場に居なくてはならないのです。
 自立した自由な立場であるということは、特定のハウスメーカーや工務店・ゼネコンの子会社でもなく、資本提携を受けてもおらず、そして何よりも建築設計者が、一市民として地域活動や団体活動に積極的に参加し、信念を持って無ければならないと思うのであります。

 志は高く!と思い、書きましたが、まさに「自らを耕して倦まず」といったところです。

 

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